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けんきょうじゅなん

剣侠受難

国枝 史郎

「東京日日新聞」1926(大正15)年5月28日~11月14日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,479 字 · 394 页

青空文庫

敵の真相

「ご覧よご覧よ楠右衛門め! 間者だなんて何をいうんだよ。若殿様だよ、思い知るがいい」君尾ピシャリとやッつける。「ねえ、お父様楠右衛門は、よっぽど馬鹿でございますねえ」

「そうともそうとも大馬鹿者だ」銅兵衛衣紋を整える。

「文三も馬鹿でございますねえ」

「問題にも何にもなりゃアしない。……どれそれではお目にかかろう」

武器蔵を出ると中庭である。それを通ると母屋の縁、廻廊をまがると客間である。細目にふすまを引き開けたが、内の様子をうかがった。間違いない。袴広太郎、旅よそおいで控えている。まず「ご免」と声をかけ、銅兵衛サラリとふすまを開けた。

「袴広太郎殿、しばらくでござった」

振り返った袴広太郎、「おおこれは傀儡師殿!」

「さようで」というと杉窪銅兵衛、ピタリとすわったものである。

敵の真相

広太郎と銅兵衛とのこの会見、銅兵衛にとっても意外であったが、広太郎にとっては一層の意外といわざるを得なかった。「いつもよいところへ現われて、ピタピタ予言をしてくれた、あの不思議な老傀儡師が、ここの主人とは夢のような話だ」――で広太郎手をつかえ、挨拶の言葉をのべようとした。と、銅兵衛とめたものである。