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けんきょうじゅなん

剣侠受難

国枝 史郎

「東京日日新聞」1926(大正15)年5月28日~11月14日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,479 字 · 394 页

青空文庫

……それはそうと島原一揆では、おれも随分働いたものさ」みつ口から歯茎をほころばせた。

「ええやはり天草殿には、天帝をお信じなされた結果、原の城へお籠りなされたので?」築土新吾、慇懃にきく。

「ぼろい儲けはあるまいかな? こう思って入城したってものさ。神様商売もうまくやると、お賽銭のあがりが大きいからなあ。ところがどうも島原では、思うようにはいかなかったよ」

「それはまたなぜでございましたな?」

「一口にいうと信者ばかり多くて、不信心家が少なかったからさ」

「面白いお言葉でございますな」

「面白いものか、ひどい目にあったよ。だってお前そうじゃアないか。一切物は信じてはいけない、それだのにお前物もあろうに、神様なんかを信じるんだからなあ。戦争に負けるのはあたりまえだよ」

「しかし神様というものは、信じるものではないでしょうか?」

築土新吾は、不思議そうにきく。

「神様の方からいえばだね、まさしくお前のいうとおりだよ。だが人間からいう時は、信じるような顔をして、本当のところは利用するんだなあ。……待てよ?」というと天草時行、床几から離れて槍をとり、陣幕をくぐってそとへ出た。