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けんきょうじゅなん

剣侠受難

国枝 史郎

「東京日日新聞」1926(大正15)年5月28日~11月14日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,479 字 · 394 页

青空文庫

天狗舞い

ここにわれら義を結び、盟を作って義旗をひるがえし、武権をくじき皇威を揚げ、政事を神代に返さんとす」

読み終わると一礼し、僧正天狗の膝もとへ、開いたままの連判状、つと押しやったものである。

「盟主とたのみ奉るは、紀伊大納言頼宣卿!」

「うむ」というと僧正天狗、袖から錦の袋を出した。「牧野兵庫、これをおせ!」

進み出たのは儒者風の天狗、袋を受け取ると印を出した。

「虎の御印、すわりましたぞ!」

声に応じて一百人、一同額を地につけた。

天狗舞い

頼宣卿の虎の御印、連判状におされるや、法眼袴の総髪の天狗、ふたたび連判状を取り上げた。

「指揮するもの由井の正雪」こういうと自身頭を下げた。「江戸表は佐原重兵衛」

声に応じ、頭を上げたのは、医師姿の天狗である。

「大坂表は金井半兵衛」

すると鷹匠に身をやつした、一人の天狗が一礼した。

「京都表は熊谷三郎兵衛」

鍛冶風の天狗一礼する。

「元帥は柴田三郎兵衛」

陶工風の天狗一礼する。

「柳営放火、将軍脱出、丸橋忠弥、あずかるべきもの」

神主風に身をやつした、一人の天狗が一礼する。

「名古屋表は坪内作馬」

――と、僧体の一人の天狗、これも謹んで一礼する。