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けんきょうじゅなん
剣侠受難
国枝 史郎
「東京日日新聞」1926(大正15)年5月28日~11月14日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,479 字 · 394 页
二組の旅人
だが事件はこれだけでは済まず、同じその夜巴御殿では、風変わりの事件が起こっていた。
というのはほかでもない。城之介から巻軸を奪い、小踊りをした天草一味が、巴御殿へ駈け込んだ時、百人あまりの覆面の武士が、巴御殿を占領していて、帰って来た天草一味の者を、一網打尽にしたのである。
二組の旅人
天草時行の一味の者を、一網打尽にした覆面の武士は、由井正雪の一党であった。これより以前、天草一味が、傾城塚を攻めようとして、騎馬で乗り出したそのおりから、塀にピッタリへばりつき、様子を窺っていた武士があったが、これこそ正雪一党の中でも、忍びの名人として知られていた、秦式部という人物で、すぐに榎町へ取って返すと、腕利きばかりをすぐり出し、巴御殿へ潜入し、留守番の者をしばりあげ、天草一味を待ち設けていたので、苦もなく計画がとげられたのである。その目的とするところは、例の巻軸を奪うことで、天草一味とらえられたからは、もちろん二本の巻軸は、正雪の手へはいったことであろう。
さてそれはそれとして、その夜から幾日か経過した。ある気持ちのよい朝まだき、根岸、朱舜水の屋敷から、一群の旅人が発足した。