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けんきょうじゅなん

剣侠受難

国枝 史郎

「東京日日新聞」1926(大正15)年5月28日~11月14日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,479 字 · 394 页

青空文庫

恋人を追って

「狂わなかったというものさ、けっく妾の眼力はね」こういったのはイスラエルのお町。

「なんでござんす、眼力とは?」聞き返したのは早引の忠三。

「木地師の連中袴様を、引っさらったという眼力さ」

「あッはん、なるほど、そのことで」

「だってお前さんじゃアないか、渋沢の藪地でバッタリと、袴様にあったと思ったら、あの騒動で見失ってしまい、仰天して後を追っかけると、藪を出たところに無数の足跡、爪先ばかりで歩いているので、木地師に相違ないと眼星をつけたのは。ならまんざら馬鹿じゃアないじゃアないか」

「ナーニそれとて原の城に、あっし達と一緒に木地師の大将、富士見の将右衛門がこもっていて、そいつの部下の木地師どもの、歩き方をあねごが知っていたからさ」

「だがそれだけじゃア袴様を、さらったという証拠にはならないよ」

「へい、マアそりゃアそうですねえ」

「最初に妾は思ったのさ。袴様は手傷を負っている。だから遠くへは逃げられまいとね」

「でもあの時あっしをかり立て、あたりを探させたじゃアありませんか」

「ところがどこにもおられなかった」

「無駄骨折ったというもので」

「そこで妾はきめちゃったのさ、木地師が袴様をさらったとね」