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けんきょうじゅなん
剣侠受難
国枝 史郎
「東京日日新聞」1926(大正15)年5月28日~11月14日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,479 字 · 394 页
広太郎殿と飲食中、ふとご令嬢のお通りを見かけ、広太郎殿の申すには、小松原家のご令嬢、お京様が通られる。甚だもって失礼ではあるが、お差し支えなくばお立ち寄り、お物語りいたしたい。貴殿お勧めして参るようにと。で拙者参りましてござる。お手間は取らせぬ。ほんのちょっと、お立ち寄りくださらば有難いしあわせ……』妹めも甚だ不注意千万。たしかめもせずうかうかと、立ち寄ったそうでございます。さあそれっきりいつまで待っても、妹の姿が現われぬ。心配になってはいってきくと、そのお客様なら二挺駕籠で、ずっと以前に裏口から立ち帰ったという女中の返辞。そこでお常仰天し、泣く泣く帰って来ましたそうで……それから家内大騒動、人を出して捜索中。さよう、ただ今も捜索中でござる。……もちろん拙者の思うには、例の人攫いの一味の者の、わるだくみに相違ない。袴氏の知ったことではない。しかし一応お越しを願い、事情申し上げた上で、お知恵もあらばお借りしたいとな。……広太郎殿、どうしたものでござろう?」
これが舞二郎の話であった。
「ううむ」とうなると広太郎、腕をくんで考えたものだ。
しかしこれは詭計であって、内心ではたいして驚かなかった。