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けんなんじょなん
剣難女難
吉川 英治
「キング」大日本雄辯會講談社、1925(大正14)年1月号~1926(大正15)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 243,807 字 · 482 页
続いて二合三合、かれ劣らずこれ譲らず龍攘虎搏の秘術と玄妙の精を闘わせば、白梅月夜も暗かと思えて、紛々たる花の飛雪が剣の渦に旋回する景色も物凄まじい。
一方の作左衛門は思わぬ味方に力を得て、当るに任せて必死と薙ぎ払い薙ぎ払いわき目もふらずに斬り廻った。騒ぎ立った五、六人の門人は乱刀を滅多矢鱈にふるばかりであったが多勢に無勢、殊に老骨の悲しさには息疲れに迫った作左衛門、次第に押ッ取り囲まれて数ヵ所の薄傷から朱を浴びたほどの鮮血が流れた。
その時、木の間隠れの彼方からチラチラと低く振りかざして来る提灯の光が、点々と七ツ八ツ見えて来た――人声、跫音、みる間にここへ近づいて来たので、すわ福知山の家中が助太刀に来たと見た一同は、どッと崩れ立って林の奥へ紛れ込んだので、大月玄蕃も隙を狙って脱兎の如く逃げはずしてしまった。
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作左衛門は血刀を置いて、助太刀の武士の前に両手をつき、さんばら髪の頭を下げて、
「危うきところをご助勢下され、何と御礼の申しようもござらぬ。拙者は納戸頭正木作左衛門でござる」
と火のような息に交ぜて云った。
「おおさては松平殿ご家臣でござったか、拙者はご城下柳端に町道場を構えております春日重蔵と申す浪人者でござりまするが、まず大事なくて大慶でござった」