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けんなんじょなん

剣難女難

吉川 英治

「キング」大日本雄辯會講談社、1925(大正14)年1月号~1926(大正15)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 243,807 字 · 482 页

青空文庫

六

と作左衛門が善後の処置を建策しているところへ、一人の家士が血相変えてその前へ膝支いた。

「ご家老様、一大事でござります。早く早くおいで下されませい」

と息さえ弾ませている。

「ご前じゃ静かにせい。して何事じゃ」

「はッ……唯今、溜りに控えた剣士方やご家中の若侍等が、みすみす勝った試合を引分けたるは不届千万と立腹して、十数人の決死組を仕立てて宮津方へ真剣で斬り込まんと殺気立っておりまする――早く、ご家老様のお声でお鎮め下さりませ」

いよいよ、事重大な成り行きとなった。作左衛門はすわこそと君公の顔をみた。忠房もさすがに面色をさッとかえて彼にせした。

六

横暴極まる京極の専断に、勃然と怒り心頭に燃えた松平の家臣竹中左次兵衛、君塚龍太郎その他覇気満溢の若侍輩は幕の蔭に潜んでひそかに鉢巻襷の用意をした上、大刀の目釘に熱い潤りをくれて、すんでに決死の幕を払って熱風一陣、宮津の家中へ斬り込まんとする出会頭へ、白足袋の跣足のまま駈け込んで来た正木作左衛門が大手を拡げて、

「こは逆上召されたか各※(二の字点、1-2-22)、この行態は何事でござる、お家の大事を思い給わぬか!」