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けんなんじょなん
剣難女難
吉川 英治
「キング」大日本雄辯會講談社、1925(大正14)年1月号~1926(大正15)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 243,807 字 · 482 页
さして行く二度の大望
一
そこで彼は、あらましの次第を髻に書きつけてある玄蕃の首を如何にして、兄と千浪の手へ渡そうかと思い惑った。
門番を叩き起して託すがいいか、それともそッと塀の中へ抛り込んで置こうか? ……
彼が、松平家の鋲門の前を、とつおいつして迷っている頃、早くも、芝田村町の角を曲った京極家の家臣七騎は、閃々たる手槍、抜刀の片手綱で、愛宕を指して驀しぐらに飛ばして来ている。
さして行く二度の大望
一
追手の武士七人の駻馬は、瞬たく間にそこへ近づいて来た。――と見て、新九郎は引っ提げていた玄蕃の首を門前から松平家の囲いの中へ塀越しにポンと投げ込んでしまった。
こうしておけば、必ずやこの下屋敷の中にいる兄と千浪の手へ、それが渡されるに違いないと思った。――とむこうから、
「おッ曲者はあれだ」
「遁すな! 斬ってしまえッ」
と劈くような声。
途端に、面前十間と隔てぬ所へ、蹄を止めた京極方の武士達が、バラバラと馬の鞍壺から跳び降りて、大刀の鞘を抜き連れるや否、左右正面の三方包み、鉄刀の矢来を作ってかかって来た。
鋲金具の屋敷門を後ろ楯に、水の垂るるが如き国俊の一刀を、ピタリと青眼に取って向けた新九郎は、眼を剣尖から三方に配りながら、