轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
けんなんじょなん
剣難女難
吉川 英治
「キング」大日本雄辯會講談社、1925(大正14)年1月号~1926(大正15)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 243,807 字 · 482 页
二
「それッあの隙に撃ち込め」
と浪頭のように巻き返した大勢は、その時どッと横合から槍、大刀を閃めかして来たのを、浪人は玄蕃の一刀を後ろへ摺り抜け、持ったる鉄扇に力をこめて、ピシリッと馬の尻を擲ったので、火牛の如く猛りだした馬は、その大衆の真ッ只中へ跳躍んだ。一同はワッと崩れ立った。
「おのれッ」
と玄蕃は力の限り手綱を引絞り、奔馬の足を喰い止めたが、憤怒の形相は物凄かった。そして、
「痩浪人はいずこにある! 遁すなッ」
と叫んだ。――が時既に遅く、はるか由良川の奔湍の中に、流れを噛んで点々と黒く見える岩から岩へ、飛び移り跳り越えて行く浪人の姿が、早瀬の鮎か山燕の如く、あれあれと云う間に向う岸へ見えなくなってしまった。
二
上流の福知山からも五里半、下流の宮津からも五里半の中央に選ばれたその日の曠場たる桔梗河原には、五町余りの長方形に、青竹の矢来を結いめぐらし、三つ扇の定紋打った幔幕の桟敷には福知山の領主松平忠房が老臣近侍を左右にして居並び、別に黒の鯨幕の蔭には試合に出る剣士の花形が鳴りを鎮めて控えていた。
それと東西に対峙して、あたかもそれを眼下に見下すが如く見えたのは、豪壮華麗な宮津方の桟敷であった。