轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

けんなんじょなん

剣難女難

吉川 英治

「キング」大日本雄辯會講談社、1925(大正14)年1月号~1926(大正15)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 243,807 字 · 482 页

青空文庫

思わず口のうちで驚き声を洩らした。意外! すくなくも新九郎にとってこの上の意外はない。一同に会釈をして後、しずかに床へ降りて来た剣客こそ、年来の雄敵と思いつめながら、間近く見ることはここに初めてな鐘巻自斎だ。

桔梗河原の矢来の外から唯一度見たことのある黒漆の長髯、逞しい五体、燦々たる二つの眼。

新九郎の血相はまったく物凄い緊張に充ち、体は石のように硬くなって、ただ、高鳴る胸の音を自分でも知るほか、双の眼は自斎その人の一挙一動に吸いついている。

叫ばす、狂わずとも、その容子は決して尋常な昂奮ではない。が、僥倖なことには、一同の眼も好奇心に駆られて、彼方へばかり注がれだしたから、誰あって、末席の新九郎が、怖るべき殺気の忿念につつまれていようとは気がつかない。

勝負は進んで、高弟の二、三人が鮮やかに打ち込まれ、小野派の錚々たる中でも、梶派一刀流の別派を工夫し出したほどの梶新左衛門までがさまで激越な火も散らさず、鐘巻自斎の精妙剣に敗れてしまった。

この上は治郎右衛門忠雄が出るか、あるいは自斎をして恣な名をなさしめて別れるか。

「アアさすがは富田三家の随一人、鐘巻自斎殿の剣となればこうも神技に近いものか、忠雄つくづく感服仕った」