轻松读懂日语经典作品
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けんなんじょなん
剣難女難
吉川 英治
「キング」大日本雄辯會講談社、1925(大正14)年1月号~1926(大正15)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 243,807 字 · 482 页
と、思ううちに、いつか不忍池の前まで来ている。せいたかは池にのぞんだ小粋な蓮見茶屋の軒先へこんがらと一緒にかかって、
「新九郎様、ここで腹拵えをしながら、ゆっくりお話しいたしましょう」
グングン先へ入ってしまった。艶めいた白粉の女も見える、桃色に灯った籠行燈、咽せるような酒の香――新九郎は門口で躊躇っていた。
「お連れ様、どうぞお上がり下さいまし」
女の声にせかれて、馴れない場所へ恟々と入りかけると、後ろにあたって、バタバタという跫音が遠のいて行った。ひょいと振り顧って見ると、自分達を尾けてでも来たような怪しい男が、一散に闇の中へ駈け出して行くのがちらと見えた。それにもはッと気をとられているうちに、
「さア此方へ――」
と蓮見茶屋の女は、手を取らんばかりにして、新九郎を奥へ誘い入れた。通された小座敷へは、やがて酒や肴が運ばれて来る。せいたかは頃合を待って、
「姐さん、用があったらこっちで手を叩くから、済まねえがちょっと彼方へ遠慮していてくんねえか――」
と酌の女を追いやってから、
「さて、新九郎様、今日思いがけなくお互いが落ち合ったのは全く親分のお引合わせだと思いやす。