轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

けんなんじょなん

剣難女難

吉川 英治

「キング」大日本雄辯會講談社、1925(大正14)年1月号~1926(大正15)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 243,807 字 · 482 页

青空文庫

七

彼奴に付きまとわれていたおかげに、五年もお前さんと会うことができなかったんだから……」

と、新九郎に眼で含ませて、お延は間もなくその部屋から出て行く様子。

その跫音は一人であるべきに、お延が梯子段を下りると、すぐ、後からまた一人の跫音が、ミシリミシリと静かに下りて行った。

ほかにも、客出入りのある奥二階とて、新九郎と他二人は、格別それに何の疑いも抱かず、最後の杯をやりとりして、いざとばかり、身仕度に勇み立つ。

新九郎は、大円房覚明を斬って、まだ生々しい血脂の曇っている来国俊をスラリと抜き、揉み紙で一しごきして、燈下に刃こぼれを検めている――

七

扇屋の暖簾から、小走りに出たお延は、風呂屋町の賑やかな人通りに交じって、程遠からぬ小桜屋の方へ急いで行くと、

「もし、もし、そこへ行くお方」

誰やら、後ろから呼びかける者がある。

「あい、私かえ?」

「いかにも」

側へ寄って来た者を見ると、濡れ烏のように艶のある絹で、黒ずくめに覆面した細づくりな侍。チラと町の灯に見えた目元の肌が、雪より白かった。

「何のご用ですえ?」

お延はツンとして云った。

「お手間はとらせぬが、ちとお話し申したい儀があるに依って、しばらく体を貸して下さらぬか」