轻松读懂日语经典作品
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けんなんじょなん
剣難女難
吉川 英治
「キング」大日本雄辯會講談社、1925(大正14)年1月号~1926(大正15)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 243,807 字 · 482 页
「どう遊ばしたのでござります。新九郎様――新九郎様」
と千浪は屈んだまま面も上げぬその人をさし覗いた。半元服の若い武士は春日新九郎である。彼はやっと顔を上げて、
「お、千浪殿でござったか……」
と微笑を見せたが、その顔はいかにも苦しげで、そして白琅のように蒼白かった。
「大層お色の悪い――冷たい汗が浮いているではござりませぬか。印籠のお薬をお出し遊ばせ、常、常や」
と千浪は日傘を供の女に渡して新九郎の腰に見えた印籠を取りかけた。
「いえ、大丈夫でござります、大丈夫でござります……」
「およろしいのでござりますか」
「最前から、あまり激しい試合を見たり、大勢の声にガンとして、気分が悪くなったばかりでござります。拙者はもう参りまする。ここさえ去れば落着くに相違ござりませぬ」
と新九郎は額を押さえながらそッと立ち上がって歩きだした。
その時は、ちょうど二度目の合図の太鼓が激しく鳴った時であった。千浪はいよいよ春日重蔵が京極の新敵手と最後の勝負をするのであろうと、それにも心を惹かれたが、新九郎の身も気づかわれたので矢来に雪崩る人浪を避けて、彼を送りながら帰り途についた――千浪の心を偽らせなければ、この群集の熱狂がどれ程のことでも、ここで新九郎と別れるには耐えなかったに違いない。