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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

05 一九三八年(昭和十三年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 229,387 字 · 453 页

青空文庫

五月二十日

島田というところも潤いのないところですね。かけ引きを主として暮す生活が人間を変化させてゆく力は非常に深刻なものです。では又。島田からの手紙はこれでおしまい。

五月二十日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 目白より(封書)〕

五月二十日  第二十四信

やっと晴れましたね。青葉がすっかり重みと厚みとを増して、初夏の色になりました。十八日には、どうせ濡れついでに、あれからすぐ丸善へゆきました。そして mao の本をきいたところ、どこの支店にもなし。いつかついでに注文をしておいて貰うことにしておきました。けれども、これは大変時間的には当にならないのです。為替の関係で。そのときフォックスという英国評論家の『小説と民衆』という本を買いました。一九三五年以後の英文学、評論の変化を示しているものです。しかし、一寸序文を見たが、小説というものの存在意義を随分初歩的なところから主張して物を云いはじめていて、英文学における批評や評論の過去の性質というものを考えさせます。英文学における評論の伝統というものをすこし知りたく思いました。テイヌがフランス人であったということだけで、その面ではフランス文学の方が昔からすこし先を行っているのではないでしょうか。