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けんきょうじゅなん
剣侠受難
国枝 史郎
「東京日日新聞」1926(大正15)年5月28日~11月14日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,479 字 · 394 页
頭領帰館
娘と猿の鬼ゴッコ。それを見ている文三という若者、変な気持ちにならざるをえない。
「ねえお嬢様、君尾様、三吉猿なんかチャイにして、私と鬼ゴッコを致しやしょう。ようござんすか、とらえますぜ」木の間をくぐって走り寄る。
「いやだヨ――、ばか文三」娘の声がすぐ聞こえる。「なんだい、お前色魔のくせに、いやらしいわ。大嫌い! さわっちゃいやよ、さわっちゃいやよ……ホ、ホ、ホ、ホ、いい気味だ! わたしが睨むと慄えるじゃアないか。弱い男ね、骨なしだわ。そうかと思うとしつッこくてさ、わたしの後ばかり追いかけてさ。ね、ね、ね、ね、君尾様、ね、ね、ね、ね、お嬢様、死ぬまで『ね、ね』というがいいわ。その代わりわたしもいってやるわ。そうよ死ぬまで『馬鹿文三』ッてね。……」
またも木の間をヒラヒラと、べに色勝った友禅の、振り袖姿がひらめき飛ぶ。
その後を追うのは猿ではなく、文三という若者の足。
「そう没義道におっしゃいますな。ね、ね、ね、お嬢様、文三はばかではございますが、どうやら猿よりはましの筈で。……早い早い随分早い、早いお足でございますなあ。こいつアどうも大汗だ。もっとゆっくり、お嬢様、内輪にお歩きなさいまし。