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けんきょうじゅなん
剣侠受難
国枝 史郎
「東京日日新聞」1926(大正15)年5月28日~11月14日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,479 字 · 394 页
だがあんまり捉えないと「ノロマのノロマの三吉や」こういって君尾に馬鹿にされる。芸を仕込まれている三吉猿、君尾の言葉なら大概わかる。でその言葉もわかってはいたが、言葉で軽蔑されるのと、手でピチャピチャたたかれるのと、この二つを比較してみると、まだまだ前者の方が辛棒ができた。で、やっぱり捉えない。とはいえいつまでも捉えないと、また君尾の機嫌が悪く、同じようにピチャピチャたたくので、そこで時には捉えることもある。
「ノロマのノロマの三吉や、さあ妾をとらえてごらん」
スーッと君尾は一方へ走った。
「ひとつ今度はとらえてやろう」こう思ったか三吉猿、一躍すると袖をとらえた。
「アラとらえたね、この悪者は! なんだいなんだいいやらしい。おとこ猿のくせに女をとらえ、何をするのさ、お放しよ! 放さないね。ソーラぶつよ」
そこで繊手がひらめいて、すぐピチャピチャと音がした。キーキーキーとなきながら、三吉猿はにげ出した。
「堪忍しない、堪忍しない。いやらしい奴、しようのない奴。ぶってやる、ぶってやる。サア、サア、サア、……」林の方へ追って行った。
と一人のさむらいが、林の中から現われた。