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けんきょうじゅなん

剣侠受難

国枝 史郎

「東京日日新聞」1926(大正15)年5月28日~11月14日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,479 字 · 394 页

青空文庫

「ははあ、美しい若い衆でも?」

「あの、いいえ、三吉猿」

すると小粋な頬かむり、のみを取っていた三吉猿が、自分の姓名を呼ばれたので、急いで手をとめて振り返った。そうして存在を示すように、キーキーキーとないたものである。

「これはこれはよい若衆。ははあ三吉と申しますかな」またも広太郎笑ったものだ。

「お可哀そうでございますわね」君尾、こんなことをいい出した。「お探しなすっているお京様、まだお目つけになれませんので」

「これは容易に目つかりますまい」

「あの、妾に似ておりますそうで」

「下世話にいう瓜二つ」

「では、やっぱり妾のように、お美しい方なのでございますのね」

「ううん」と広太郎面喰らってしまった。だが益※(二の字点、1-2-22)気に入った。――素直でいいな、全くいい。――

「さようさよう、あなたのように、お美しい方でございます」

「そうして妾のようにおとなしい」

――あッ、こいつだけは賛成出来ない――。

「いや、あなたはお転婆でござる。もっともそれがよろしいのではあるが。……」

こう率直にいったのが、かえって君尾には気に入ったらしい。ホッ、ホッ、ホッ、と例の笑い――明るい笑い声をぶちまけた。