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けんきょうじゅなん
剣侠受難
国枝 史郎
「東京日日新聞」1926(大正15)年5月28日~11月14日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,479 字 · 394 页
……くさりかたびらも大切だ、千切れた所はつづるがいい……たすきの白布頭の鉢金、さあさあ人数だけこしらえろ……」
銅兵衛八方へ指図をする。
武器と武器との触れ合う音、ビーンビーンとつる鳴りの音。……出て行く者、はいって来る者、女は女で立ち働き、男は男で立ち働く。手入れができると片っぱしから、ドンドン外へ持って出る。要所要所へ配るのであろう。そとから持ち込むのもある。イタミの出来た武器であろう。
「ばかめ、なんだ、その手入れは!」銅兵衛またも叫び出した。「布でふいて油を塗れ! 油を塗ったらまたふくのだ。そうだ今度は乾いた布でな。……これこれ馬鹿者、なんということだ。槍の穂先を磨き粉で磨く? そんなべら棒があるものか。やっぱり布だ、布で拭け。さてそれから油をさす、そうして二、三時間うっちゃって置く。乾いたところでまた拭くのよ。そういうことを五、六度やる、すると錆なんか落ちてしまう。……さあさあ今度は楯を磨け! とりわけ竹立牌に気をつけろ。それで銃丸を防ぐことが出来る。……巣車の縄をなえ! 弓がけ、弓ごての縫い目をしめろ! ああ忙しい忙しい! これでは狂人になりそうだ! さすまた、もじり、棒、まさかり、こういうものだって馬鹿には出来ねえ、出来るだけ手入れをするがいい」