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けんきょうじゅなん

剣侠受難

国枝 史郎

「東京日日新聞」1926(大正15)年5月28日~11月14日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,479 字 · 394 页

青空文庫

人さらい

「おかしいなあ、なんのことだろう? お嬢様にご用心なさりませ。あぶのうございます、ご用心。……おれにいったのか誰にいったのか、こいつからしてわからない。おれには一人だって妹はない、女房がないんだから娘もない」

気がついて見るとその傀儡師、宮坂町の方へ行くと見えて、春日町の辻を西へまがった。

「待てよ、こいつひょっとすると、お京様のことじゃないかしら? どっちみちひどく気にかかるなあ」真夏の白昼、修験者と傀儡師。二つのものの怪にぶつかったように、広太郎は慄然と身ぶるいしたが、はたして大事件が持ち上がった。

人さらい

その夜起こった事件というのは、不思議といえば不思議でもあり、奇怪といえば奇怪でもあるが、平凡といえば平凡ともいえる。一口にいえば、娘のお京が、危うく人さらいにさらわれようとしたのを、袴広太郎が人さらいをとらえ、通りかかった同心達へ、突き出したというまでである。

人さらいというのはほかでもなく、「イスラエルの神へにえ捧げようぞ」こう呼ばわった修験者であった。

その夜お京は兄の部屋で、かなり遅くまで話しこみ、十二時近くなって寝についた。お京はおとなしい性質で、日本式の娘型。