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けんきょうじゅなん
剣侠受難
国枝 史郎
「東京日日新聞」1926(大正15)年5月28日~11月14日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,479 字 · 394 页
木地師の道中
例の調子で、イスラエルのお町。
「ワーッ、いけねえ、もうコレだ。何かというとおどすんですね」
「それがさ、妾におどされるのが、お前にはひどくうれしそうじゃアないか」
「またあねごときた日には、あっしをおどかすのがうれしそうですねえ」
「おどかされっぷりがいいからさ」
「ところであねごはおどしっぷりがいいや。どっちみちあねごと二人っきりだ。今度の旅行は楽しみさ。口説くかな、その辺で」
「口説かれたいね、袴様に」
「あッ、なるほど、そうでしたねえ。袴様を探しに行くんでしたねえ、木地師のあとを追っかけてさ。にわかに楽しくなくなっちゃった」
袴広太郎を探すべく、木地師のあとを追っかけて、二人は信濃へ行くのらしいが、はたして木地師の一隊は、信濃方面へ入り込んだかしら?
さようこの頃、木地師の一隊、笹子峠の辺を歩いていた。
木地師の道中
海抜一千一百尺、ここは笹子の山道である。一隊の人数が歩いている。火事場頭巾のような風変りの頭巾、縞の筒袖山袴、手に小鎌を持っている。すなわち木地師の一隊である。先頭に立ったは将右衛門、つづいて二挺の駕籠が行く。その駕籠の戸が開いている。一つの駕籠にはお京様、もう一つの駕籠には袴広太郎、のどかな顔をして乗っている。