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けんきょうじゅなん

剣侠受難

国枝 史郎

「東京日日新聞」1926(大正15)年5月28日~11月14日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,479 字 · 394 页

青空文庫

「はい、さようにございます」

「そうして銅兵衛は紀州殿の、旧家臣だとこういうのだな」

「はい、さようにございます」

「で、君尾殿がかどわかされた晩――杉窪の里の亡びた晩、たしかに紀州の伯父上が、由井正雪一党を率い、異風天狗に身をやつし、杉窪へ行ったというのだな?」

「私、殿の内命を受け、杉窪の里へまかりこし、二代目の長楠右衛門について、取り調べましたところでは、それに相違ございません」

「だがそれにしても紀州の伯父上、何ゆえ天狗などに身をやつされ、杉窪などへ行ったのであろう? ……そんな異風の天狗などに……」

「恐らくそれはこうでござろう」口を出したのは朱舜水、「天狗は我慢の象徴でござる。豪放濶達の紀州殿のこと。我慢の天狗に身をやつされ、幕府の権勢をセセラ笑い、天狗舞いをしたのでございましょうよ」

「しかし正雪一党などを」

「さよう。こいつは問題でござるな」ここで朱舜水思案した。

またはなやかな笑い声が、君尾の群れからわき起こった。

君尾をカセに

また聞こえてくる君尾の笑い声、はなやかで明るくてサッパリしている。そこで朱舜水いったものである。

「準頭声といいましたな。