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けんなんじょなん

剣難女難

吉川 英治

「キング」大日本雄辯會講談社、1925(大正14)年1月号~1926(大正15)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 243,807 字 · 482 页

青空文庫

「黙れ黙れ。多くの先輩をないがしろに致したさえ、言語に絶えた僭越。その上に小野派一門の恥さらしを致しおって何言い訳がある。弁巧は無用じゃ」

「この新九郎が短慮の罪は、幾重にもおゆるしの程を……」

「その詫言はもう遅い。忠雄先生にももっての外のご立腹。破門せいというお言葉であるぞ」

「えッあの破門でござりますと?」

「おお見せしめのため破門いたす。たッた今道場を出て失せい、その面を見るのも小癪にさわる!」

「あ!」

絶望の底へつきのめされた新九郎は、くらくらと暗い眩暈を感じたかと思った間に、梶新左衛門に襟がみを引ッ掴まれ、不浄門から戸外の方へ突き出されてしまった。

「梶様、お願いでござります。新左衛門様ッ」

新九郎は不浄門の扉を外から叩いて叫んだ。折角、小野派の門に入って、二年近い間というもの、夢寐にも、修業の念を忘れずにきたのに、今ここで破門されては大望の上の大蹉跌、どこに再びこれ程の名師を求め得よう。のみならず、今までの忍苦はすべて水泡に帰してしまわなければならぬ。

「梶様! 新左衛門様! どうぞ先生にもう一度のお取りなしを願いまする。新九郎が一生のお願い、これからは必ずとも道場の掟を守り、血気に逸って今日のような不始末は仕りませぬ」