轻松读懂日语经典作品
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けんなんじょなん
剣難女難
吉川 英治
「キング」大日本雄辯會講談社、1925(大正14)年1月号~1926(大正15)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 243,807 字 · 482 页
「知らなくってどうするものじゃない。お前さんもしばらく見ないうちに、大層頼もしいご人態になりましたねえ」
「はて、そういうお前は?」
「お延ですよ。蘭谷の山荘で、初めて会った時からザッと五年越し、いまだにお前さんを想いつづけている私を忘れちゃ、幾ら何でも可哀そうじゃありませんかえ」
闇に紛れて、ピッタリ寄り添って来たお延は、五、六年前から、すこしも年をとらないような年増の色香を、仄かに頭巾の裡からのぞかせて、いきなり、痛いほど新九郎の手を握りしめる。
「ねえ新九郎さん、御曹子の親分さん……」
「往来中で見っともない。まあこの手を離してくれ」
「あたりは淋しい屋敷町――と云ったところで、何もここで口説こうとは云いませんよ。実のところは、お前さんに一大事を報らせたいばかりに、やッと紀州屋敷を尋ねあてて来たのです」
「何、拙者に一大事を報らせる為?」
「ええ、もしや新九郎さんは、近いうちにこんがらとせいたかの二人を連れて、秩父の三峰へ出かける下相談をしませんでしたかえ」
「不思議な。どうしてそんな内輪話まで知っているのだ」
「お前さんも薄々は感づいていましょうけれど、笊組の久八だの、大月玄蕃や投槍の小六などは、いまだに絶えず寝刃を研いで、新九郎さんの隙を窺っているのですよ。