轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

けんなんじょなん

剣難女難

吉川 英治

「キング」大日本雄辯會講談社、1925(大正14)年1月号~1926(大正15)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 243,807 字 · 482 页

青空文庫

と云っても、悪女の深情けでは、そちらが余り気がすすまないだろうけれど……」

「そう云うお前には、確か投げ槍小六という男がついている筈」

「憎らしい。あんな男に心中立てするくらいなら、誰が今みたいなことをわざわざ知らせに来るものかね、ちったあ私の気持を察して下さいな……」

肩を並べた二人の影は、いつか歩くともなく道を捗どって、山の手から外濠の方へだらだら下っていた。すると、不意に新九郎が、

「あ……」

悪寒にでも襲われたように立ち竦んだ。

「おや、どうしたんですえ? 真っ蒼な顔をしてさ」

「お延、ありゃ尺八の音じゃないか」

「おおかた、外濠をうろついている、宿なしの虚無僧でしょうよ」

「…………」

新九郎は魔魅の声でも聞くように、宙に眼を吊らしてしまった。いかにもそれはお延が言う通りな虚無僧の尺八、縷々として咽ぶような哀音が、彼方の闇に迷っている。

「駕に乗ろう、何だか急に寒くなった。拙者は虚無僧の尺八を聞くと、妙に気が滅入ってしまう癖がある」

「変な人――」

お延は笑ったが、男が自分の首尾をうけ入れている様子に満足して、いそいそと駕を見つけた。そしてその晩から、二人の姿が、しばらく雉子町辺の遊び風呂屋に隠れた。