轻松读懂日语经典作品
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けんなんじょなん
剣難女難
吉川 英治
「キング」大日本雄辯會講談社、1925(大正14)年1月号~1926(大正15)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 243,807 字 · 482 页
折から門で訪ずれる者がある。顔を上げるとあたりはもう黄昏れていた。
「誰だ」
とせいたかが内から呶鳴ると、
「駕屋でございます。雉子町の扇屋から、御曹子の親分のお手紙を持って参りました」
「扇屋というなあ丹前風呂の扇屋か」
「そうです、お迎えの駕を二挺持って参りましたから、手紙のお二方にすぐ来てくれるようにというお言伝てでごぜえます」
「暢気だなあ、人の気も知らねえで」
とせいたかとこんがらが、使いの手紙を受け取って読み下すと、相違ない新九郎の文字、取り急ぎ相談したい用件があるから、すぐこの駕で来てもらいたいという文意。
尋ねあぐんでいたところなので、二人は猶予なく迎えの駕に乗って扇屋へ急いだ。すると、せいたかとこんがらが出て行った後へ、庭伝いにそっと入って来た人影がある。
行燈の下に、投げ捨ててあった文殻を拾って、じっと、瞋恚の眼で読み下している人――それは寮の主、光子の御方だった。
ビリッと手紙を裂いて、庭の面へ抛り捨てた御方は、気色ばんだ面を上げてあたりを見まわしたが、ふと壁の釘に掛けてある新九郎の着更、黒羽二重の衣類に目をつけて、手早く、それを自分の身に着け、男帯を上から締めて、いかつい大小まで腰に差した。