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けんなんじょなん
剣難女難
吉川 英治
「キング」大日本雄辯會講談社、1925(大正14)年1月号~1926(大正15)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 243,807 字 · 482 页
早く様子を話してくれい」
「ああそうでござんしたか。今笊組の連中が、この先の小桜屋へ五、六人連れで来ているところ……であの首尾を告らせに、こッそり一座を抜けて来たものですよ」
「忝けない、して人数は? 帰る時刻は」
新九郎を初めこんがらもせいたかも、思わず膝を乗りだした。と――部屋仕切りの唐紙に、サラサラと微かな衣ずれがどこかでしたが、誰もそれとは気づかなかった。
「一座の者は、笊組の臂の久八をはじめ、身内の荒神十左、花笠の源吉、それに大月玄蕃と投げ槍小六が交じっての五人ですが、ちょうど何かの相談があるとやらで、氷川下の髯の重左も、多勢の侍を連れて来ていました」
「や、深見重左も参っていると?」
「ですが、驚くことはありませんよ。その重左の組とは、小桜屋の前で別れて、もう半刻ばかり後に、笊組は柳原土手から浅草見附の方へ帰る様子ですから、ぬからずにその途中で待ち伏せしていておくんなさい、私ゃまたこれから帰って、何喰わぬ顔をして、久八や玄蕃にうんと酒をすすめておくから……」
「よし、じゃ一足先に廻って、銀杏稲荷の物蔭に隠れているぞ」
「そこで私が頼んでおくのは、誰を斬り遁そうとも、あの投げ槍小六だけは、きっと殺して下さいよ。