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とうおういぶん
東奥異聞
佐々木 喜善
「東奥異聞」閑話叢書、坂本書店、1926(大正15)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 63,862 字 · 124 页
が、木の倒れる端風で吹き飛ばされて野越え山越え、ついに遠く江刺の郡に飛んできて正法寺の屋根の上に吹きつけられた。おりしもお寺の本堂ではいくたの小僧どもがお経の稽古最中のところであったが、なんだか屋根にへんな鳥が飛びついたと思って、ぞろぞろ出てみるとそれは鳥ではなくて人間であったのでおおいに驚いた。それから小僧どもは大騒ぎをして梯子を持ってきて伸べてみたがいずれも短くて屋根に届くものがなかった。そこでやむをえずうちから一枚の四幅風呂敷を持ち出して、その四隅を小坊主が四人して持ちひろげていて、その人はやくこれに落ちてこいと上に向かって呼ばわると、小檀那がごろごろと屋根の頂上からころんで風呂敷の上にドシンと落ちこんだ。その拍子に風呂敷がたわんで四人の小坊主の頭がコチンと鉢合せになるとそこから火が出て、軒下に飛びついてお寺は火事となった。そのときかの文福茶釜が逃げ出そうとあせったが、金綱でかたく繋がれているので自由ができず、蓋ばかりどこかへ飛んだということである(15)。これでひとまずこの飛んだ話はやめにする。
(1)秘事念仏の黒仏は日本に八体あるという俗説である。