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とうおういぶん
東奥異聞
佐々木 喜善
「東奥異聞」閑話叢書、坂本書店、1926(大正15)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 63,862 字 · 124 页
肥料もなにもかもそのとおりであったが、じつはこの若者は主人からもらったアワ種をば畑いったいに蒔かずに一つ所におろしてき、雑草を取るにも一つ所のアワ苗をみな抜き取ってしまって、たった一本だけ残しておく。肥料をやるにもその他の仕事も畑一枚分をことごとくその一本のアワに手当をしたから、秋になるとそのアワが大きくなったが、奇妙奇態なアワの大木となってしまった。収穫の秋となって、そんなことをいっこう知らぬ主人は、以前の畑もすでに刈らねばならぬだろう、今日は幸い天気も上々だから、おまえもアワ刈りをしたらどうだろうというと、若者はおれもそう思っていたところだが、なにしろおれの畑のアワはなみたいていでは刈られない。これから出て樵夫の五、六人も頼んでこようというので、主人は不審に思ってそのわけを聞くと、そのアワの大木のことをいう。それではというので樵夫の七人も頼んでやるということになったがその長者の小檀那は、これは珍しいことだと非常におもしろがって、畑にいってみるといかにもアワの大木がいちばん上の梢端には雲を引き懸けらせて突っ立っている。それほどの大木だから樵夫どももほんとうになみたいていではなく、幹の周囲をあっちにゆきこっちに回ったりして、斧でもって一日がかりでやっと伐り倒したが、そのとき稍離れて見物していたかの小檀那