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あおべかものがたり
青べか物語
山本 周五郎
「文藝春秋」1960(昭和35)年1月号~1961(昭和36)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 160,888 字 · 317 页
がひけらあね。それでお互いの飲み食いした分を出しあう、いいかい、つまりおまえさん方の云う会費だよ、早く云えば、そうだろう」
「そこが違うんだが」若い巡査は帽子をぬいで、ハンケチで額と帽子の中を拭いた、「会費というのは頭割りで幾ら幾らと」
「そこは違いますよ、違いますとも」あさ子は立てた片膝を左右に揺すった。若い巡査はいそいで眼をつりあげ、あさ子は云った、「おまえさん方は行儀がいいからそんなことはないだろうが、こちとらの客は幾ら幾らなんておきまりどおりで済むような手合じゃあないんだ、五色揚を四五十も喰べて一升酒くらってけろっとしているやつもあるし、二合も飲めばへどをついてぶっ倒れるようなろくでなしもいるんだ、それを頭割りで片づけるなんてあこぎなまねは、営業でもしていればべつだろうが、こっちは営業じゃあないからできやしないさ、それぞれ飲んだり食ったりした分を出しあってもらう、これが当然じゃあないか」
「僕は転勤したくなっちゃうな」若い巡査は呟いた、「僕はこの土地には性が合わないんだ」
「あたしゃあ理の当然を云ってるんだよ」とあさ子は追い打ちをかけた、「友達を集めて飲み食いをして、お互いに銭を出しあってそれで営業違反になるんなら、分署の旦那方が会費を出しあって宿直で飲み食いをするんだって営業違反って勘定だろう、うちは