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あおべかものがたり
青べか物語
山本 周五郎
「文藝春秋」1960(昭和35)年1月号~1961(昭和36)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 160,888 字 · 317 页
SASE BAKA
SASE BAKA
おすずは船宿「野口」の娘で、年は十七歳だった。両親と姉が二人、弟三人の家族であるが、きょうだいがそれぞれ父か母か、または祖父か祖母に似ているのに、おすずだけは誰にも似ていなかった。ここに桃を八つ並べたとすると、その中の一つが林檎であるように、躯つきも顔だちも、気性までがみんなと違っていた。――彼女のぜんたいから受ける印象は、清純、可憐、初心、という平俗な成語に、ほのかないろけを加味した感じであった。背丈は五尺一寸くらい、痩せがたできりっとしていて、肩がいたいたしいほど小さく、手も足も小さかったが、指はすんなりと先が細くなってい、爪はいつも桃色に染まっていた。――顔はうりざねがたであった。その土地には珍しく、北国そだちのように色が白く、きめがこまかで、両の頬には活き活きとした血の色を浮かせ、冬のさなかでも、汗をかいているようにしっとりと湿りけを帯びていた。眉毛は細いけれども濃く、描き眉のようにはっきりといいかたちをしていた。少し尻さがりの眼も細かったが、絶えず羞んでいるような潤いがあり、人に目礼をしたり話しかけたりするときには、まるで恋でも語りかけるのかと思うほど、その眼の潤いが情熱的にみえた。