轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
あおべかものがたり
青べか物語
山本 周五郎
「文藝春秋」1960(昭和35)年1月号~1961(昭和36)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 160,888 字 · 317 页
もくしょう
十四の年から通船に乗り、二十三の年にエンジナーの免状を取って、二十八号船のエンジさんになった。兵隊の経験はない。背丈が足らなかったのだ。五尺そこそこのずんぐりした躯つきで、毛深くて、角張った、しかんだような顔をしていた。滅法しゃがれ声だから、話をするのに苦しそうだし、そのためというよりも性分だろうが、話しべたで、めったに人と話したがらなかった。仇名は「もくしょう」という。もくしょうは冬期によく捕れる蟹で、握りめしのようなむっくりした形をしてい、茶色で、全体が毛だらけであり、毛蟹とも呼ばれていたが、それは殆んど冒涜的にまで元井エンジに似ていた。
彼にはまだ水夫のころから好きな娘があった。新川堀の「臼田屋」という、雑貨と洋食屋を兼業している家の二女で、名をおさい、年は彼より二つ下だった。彼女には兄と妹があり、洋食屋のほうは兄がやっていた。必要のないことは省略しよう。おさいは昼のうち雑貨店のほうで働き、夕方からは洋食屋のほうを手伝った。色が黒く、小柄で、縹緻もかなりいいし、勝ち気ですばしこくて、手も口も達者だった。――臼田屋は通船の発着所のほぼ前にあるから、船員たちとはもとより馴染だったし、洋食部のほうには、土地の漁師や若者たちもよく集まるので、おさいのほかに二人の女給がいた。