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あおべかものがたり
青べか物語
山本 周五郎
「文藝春秋」1960(昭和35)年1月号~1961(昭和36)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 160,888 字 · 317 页
対話(砂について)
点睛も忘れなかったわけである。こうして、ゆうべの女たちに再び召集をかけ、二台のタクシーに分乗して、東京へ芝居見物にゆき、かもから搾りあげたものをきれいに使いはたして来た、ということであった。
「きれえさっぱり、いい気持よ」とおせいちゃんは云った、「でもこれでまた当分ぴいぴいだわ」
私はなんと答えようもなかった。
対話(砂について)
「砂なんて、おっかしなもんだなあ」と富なあこが云った。
「うう」と倉なあこが云った。
五月十七日の晩で、二人は沖へ魚を「踏み」に来たのであった。汐が大きく退く満月の前後には、浦粕の海は磯から一里近い遠くまで干潟になる。水のあるところでも、足のくるぶしの上三寸か五寸くらいしかない。そこで、馴れた漁師や船頭たちは魚を踏みにゆくのであるが、その方法は、――月の明るい光をあびながら、水の中を歩いていて、「これは」と思うところで立停り、やおら踵をあげて爪先立ちになる。すると足の下に影ができるので、魚がはいって来る。筆者もこころみたことがあるが、魚のはいってくることは慥かで、――はいって来たあと、呼吸を計って、それまで爪先立ちになっていた踵をおろしざまその魚を「踏み」