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あおべかものがたり

青べか物語

山本 周五郎

「文藝春秋」1960(昭和35)年1月号~1961(昭和36)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 160,888 字 · 317 页

青空文庫

このまえ、全学連の学生が訪ねて来て、――革命論のような話になったとき、「革命が仮に成功しても、君たちの手に渡るプロパーティはありゃしない、日本にも僅かに資本家といえる連中はいるようだが、それらの持っているのは才取り経済による紙幣や証券でしかない、君たちが現実に奪えるのは、与える職にも窮する超過剰人口、処理するのに困難な汚物の山、傷だらけになった国土。その他もろもろの重荷だけだぜ」と私は云った。よしましょう、私は本当のところそんなことを気に病んでいるのではない、ただ、――一つ※(「さんずい+入」、第4水準2-78-20)のみじめなすがたを見たとき、むやみに悲しくなって、以上のようなつまらない感慨におそわれただけであり、こんなにしてしまった国土を、あとから来る若い年代の人たちに譲ることの恥ずかしさに、深く頭を垂れるおもいだったのである。

一つ※(「さんずい+入」、第4水準2-78-20)を過ぎてまもなく、沖の弁天社が見えた。「ひねたような松が五六本ひょろひょろと生えた」と本文には書いたが、いまでは数も多く、松そのものもすくすく伸びて、立派な林になっていた。