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けんきょうじゅなん

剣侠受難

国枝 史郎

「東京日日新聞」1926(大正15)年5月28日~11月14日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,479 字 · 394 页

青空文庫

憎まれた日には追っつかない。退散退散」と城之介、腕を伸ばすと大力無双、広太郎を小脇にかい込んだ。鉄杖を突くと片足をはね、一本歯の足駄高々と、ヒラリと飛んだは金目垣、さながら一匹の巨大な蛾だ。白々と姿を消してしまった。

またも鳴き立つ籠の鸚鵡、バタバタバタと羽ばたきをする。と四散する翼の白粉、ボッと四辺がけむるほどだ。負けずにうなるスペイン猫、背を持ち上げてグルグルグル、血だまりの周囲をまわり出した。

足音の主はお町であった。

「君尾という娘、目つかったからには、どうでも袴様へ知らせなければならない。ああ捨てられたら死ぬまでだよ! ……どうしたんだろう? やかましいねえ」

庭づたいにやってきた。見ればタップリ縁の上、血がたまって赤黒い。

ギョッとしたお町、「袴様!」

呼びかけたが返辞がない。駈け上がると探し出した。

「袴様! 袴様! 袴様!」

返辞のあろう筈がない。飛び返ってきたイスラエルのお町、ベタベタと縁へすわってしまった。思い出したは忠三の言葉!

「城之介めだ! 城之介めだ!」ヨロヨロと立ったがまたベッタリ。

「畜生! 畜生! 畜生! 畜生! 城之介めが袴様を殺したヨーッ」