轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

けんなんじょなん

剣難女難

吉川 英治

「キング」大日本雄辯會講談社、1925(大正14)年1月号~1926(大正15)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 243,807 字 · 482 页

青空文庫

それには忠房の顔にも尠なからぬ不安の影が漂いはじめた。

それと云うのは、度重なる生田の屈辱に、悲憤やる方ない京極家から、改めて両藩の剣道試合を申し込んで来たのである。武芸十八番の中でも武家の表芸とする剣道であれば松平家でも否みは出来ず、すぐ承諾の使者を遣ったが、小藩の松平家では充分な禄高で有名な剣士を招聘することが出来ないので、事実家中の武芸熱心であるにかかわらず、世間へ出して押しも押されもせぬ指南番はいなかった。ただ一人馬廻り役を兼ねた竹中佐次兵衛が真蔭流の指導者となっていたが、実はこれとて京極方の大月玄蕃、その代師範の桐崎武太夫などから比較すれば問題になる腕でないのは余りに明瞭であった。そこの内情を探った京極家で、この致命的な報復に出て来たのだと知った松平忠房は、食事もすすまぬほど苦慮していた。

「これ、誰かおらぬか!」

白襖の書院から、忠房のいらいらした声が響いた。次の間へ姿を見せた近侍はひそやかに、

「お召でござりますか――」

と裃の折目通りに手をつかえた。ジロリと流眄をくれた忠房は、

「生田馬場の当日から、今日で幾日に相成るの?」

と不意に尋ねた。