轻松读懂日语经典作品
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けんなんじょなん
剣難女難
吉川 英治
「キング」大日本雄辯會講談社、1925(大正14)年1月号~1926(大正15)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 243,807 字 · 482 页
御方は今、朝の風呂から上がって、麝香や、白檀油の匂いと覚えるものが、ぷんと鼻をうつばかりな化粧の間に入って、心しずかに、いやが上の装いを凝らしている。
「御方さま」
「何かえ?」
鏡の前から振り顧って、後ろに、手をつかえた老女の水瀬を見た御方の顔は、もう曙の花が露を払ったような身じまいを済ましておられた。
「ただ今、蘚伯さまが、いつもの通り、診てお帰りになりました」
「そうでしたか。そして、今朝あたりのご容子は」
「もうお薬も要らないほどと仰っしゃられました」
「まア、そんなに早く……」
水瀬の辞から察するに、どうやら寮のうちに、誰か寝ている病人があるらしい。けれど、医師の蘚伯がよいと云ったのを、御方は何故か、不足らしい色を見せて聞いたのであった。
「おおそれから、妾が頼んでおいた品は?」
「蘚伯さまがしきりに考えているのを、無理に説いて貰っておきました。強い蘭薬ということでござりますゆえ、分量を間違えぬようにと、くれぐれ申し残しましてござります」
「何の、蘭薬というても、いろいろな薬を京都で扱うている覚えもある、心配はありませぬわいの」
「ではこれへ置きまする」