轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

けんなんじょなん

剣難女難

吉川 英治

「キング」大日本雄辯會講談社、1925(大正14)年1月号~1926(大正15)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 243,807 字 · 482 页

青空文庫

「もう今頃は、枝垂れ桜の肥しになって、桜の根方に斬り殺されているだろうさ」

「やれやれ、虚無僧だけに何となく罪っぽいのう……」

と、不意に、むくり蝮のように首をもたげた縁台の浪人が、凄い眼で、亭主の顔を睨みつけた。

「お目ざめなさいましたか、お冷でも差上げましょうか」

と、亭主も、ちょっと気味が悪かった。

「ああ、夢ではなかったか……」

起き直って腰かけた浪人は、一同を見て、

「町人、今其方たちは虚無僧と言ったな」

「へい、申しました」

「一人は女の虚無僧、一人は足なえの虚無僧、それが、山手組の悪侍に斬り囲まれていると言ったのは真か、拙者は、夢のように聞いていたが、本当であったのか」

「まったく、それに相違ありません」

「そうか!」

不意に鯉口を掴んで、縁台を離れた浪人の眼は、怪しいかがやきを帯びて爛々と赤く血走った。

「亭主、早く一杯注げ」

気を呑まれて、うろうろした亭主が五郎八茶碗に注いで出すと、べッと吐いて、

「水ではない、酒だ、酒だ」

注ぎ代える間に下緒を取って、手早く、襷とした浪人は、てんてこ舞いして亭主が出した酒を、ガブ、ガブ、ガブ……と一息に呑み干した。