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ことうのおに
孤島の鬼
江戸川 乱歩
「朝日」博文館、1929(昭和4)年1月号~1930(昭和5)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 181,795 字 · 359 页
この娘は詩人でさえありますね。だが、それにしても、こんなことが、果してあり得るでしょうか。罪の深いいたずら書きじゃないでしょうね」
私は医学者諸戸の意見を聞かないではいられなかった。
「いたずら書き? いや、恐らくそうじゃあるまいよ。深山木氏がこうして大切にしていた所を見ると、これには深い意味があるに違いない。僕はふと考えたのだが、この終りの方に書いてある、窓の下へ来たという人物は、よく肥えた、洋服姿だったらしいから、深山木氏のことじゃあるまいか」
「アア、僕も一寸そんな気がしましたよ」
「そうだとすると、深山木氏が殺される前に旅行した先というのは、この双児のとじこめられている土蔵のある地方だったに相違ない。そして、土蔵の窓の下へ深山木氏が現われたのは、一度ではなかった。なぜと云って、深山木氏が二度目に窓の下へ行かなんだら、双児はこの雑記帳を窓から投げなかっただろうからね」
「そう云えば、深山木さんは、旅行から帰った時、何だか恐ろしいものを見たと云っていましたが、それはこの双児のことだったのですね」
「アア、そんなことを云っていたの? じゃ愈々そうだ。深山木氏は僕達の知らない事実を握っていたのだ。