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ことうのおに

孤島の鬼

江戸川 乱歩

「朝日」博文館、1929(昭和4)年1月号~1930(昭和5)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 181,795 字 · 359 页

青空文庫

そうでなければ、こんな所へ見当をつけて、旅行をする筈がないからね」

「それにしても、この可哀想な不具者を見て、何故救出そうとしなかったのでしょう」

「それは分らないけれど、直ぐぶっつかって行くには、手強い敵だと思ったかも知れぬ。それで一度帰って、準備をととのえてから、引返す積りだったかも知れぬ」

「それは、この双児をとじこめている奴のことですね」私はその時、ふとある事に気附いて、驚いて云った。「アア、不思議な一致がありますよ。死んだ軽業少年の友之助ね、あれが、『お父つぁん』に叱られるといってましたね。この雑記帳にも『お父つぁん』という言葉がある。そして、両方とも悪い奴の様だから、若しやその『お父つぁん』というのが、元兇なんじゃありますまいか。そう考えると、この双児と今度の殺人事件との聯絡がついて来ますからね」

「そうだ。君もそこへ気がついたね。だが、そればかりじゃない。この雑記帳は、よく注意して見ると、色々な事実を語っているのだよ。実に恐ろしい」諸戸は、そう云って真底から恐ろし相な表情をした。

「若し僕の想像が当っているならば、この全体の邪悪に比べては、初代さん殺しなんか、殆ど取るに足らない程の、小さな事件なんだよ。