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ことうのおに
孤島の鬼
江戸川 乱歩
「朝日」博文館、1929(昭和4)年1月号~1930(昭和5)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 181,795 字 · 359 页
私達は肩を組み合い、もつれるようにして、一高の寮歌などを歌いながら、下宿に帰った。
「君の部屋へ行こう。君の部屋へ行こう」
諸戸はそう云って、私を引きずるようにして、私の部屋へ這入った、そこには私の万年床が敷き放しになっていた。彼につき倒されたのであったか、私が何かにつまずいたのであったか、私はいきなり、その万年床の上に転がったのである。
諸戸は私の傍に突立って、じっと私の顔を見下していたが、ぶっきら棒に、
「君は美しい」
と云った。その刹那、非常に妙なことを云うようだけれど、私は女性に化して、そこに立っている、酔の為に上気はしていたけれど、それ故に一層魅力を加えた、この美貌の青年は、私の夫であるという、異様な観念が、私の頭をかすめて通過ぎたのである。
諸戸はそこに膝まずいて、だらしなく投出された私の右手を捉えて云った。
「あつい手だね」
私も同時に、火のような相手の掌を感じた。
私が真青になって、部屋の隅に縮込んでしまった時、見る見る諸戸の眉間に、取返しのつかぬことをしたという、後悔の表情が浮んだ。そして喉につまった声で、
「冗談だよ。冗談だよ、今のは嘘だよ。