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ことうのおに

孤島の鬼

江戸川 乱歩

「朝日」博文館、1929(昭和4)年1月号~1930(昭和5)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 181,795 字 · 359 页

青空文庫

動かない様でも、鳥居の影は、目に見えぬ早さで、地面を這って、少しずつ少しずつ、丘の方へ近づいて行った。

だが、それが石地蔵の数間手前まで迫った時、私はふとある事に気づいて、思わず諸戸の顔を見た。すると、諸戸も同じことを考えたと見えて、変な顔をしているのだ。

「この調子で進むと、鳥居の影は石地蔵には射さない様じゃありませんか」

「二三間横にそれているね」諸戸はがっかりした調子で云った。「すると僕の考え違いかしら」

「あの暗号の書かれた時分には、神仏に縁のあるものが、外にもあったかも知れませんね。現に別の海岸にも、石地蔵の跡がある位だから」

「だが、影を投げる方のものは、高い所にある筈だからね、外の海岸にこんな高い岩はないし、島の真中の山には神社の跡らしいものも見えない。どうも、「神」というのはこの鳥居としか思えないのだが」

諸戸は未練らしく云った。

そうしている内に、影の方はグングン進んで、殆ど石地蔵と肩を並べる高さに達した。見ると、丘の中腹に投じた鳥居の影と、石地蔵との間には、二間ばかりの隔たりがある。

諸戸はそれをじっと眺めていたが、何を思ったか、突然笑い出した。