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ことうのおに
孤島の鬼
江戸川 乱歩
「朝日」博文館、1929(昭和4)年1月号~1930(昭和5)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 181,795 字 · 359 页
秀ちゃんは、話して見ると、一層優しくかしこい娘であることが分って、私達は段々仲よしになって行った。秀ちゃんは智恵のつき始めた子供の様に、次から次と、私に質問をあびせた。私は親切にそれに答えてやった。私は獣みたいな吉ちゃんが、小面憎いものだから、態と秀ちゃんと仲よくして、見せびらかしたりした。吉ちゃんはそれを見ると、真赤に怒って、身体を捻って、秀ちゃんに痛い目を見せるのだ。
秀ちゃんはすっかり私になついてしまった。私に逢いたさに、えらい力で吉ちゃんを引ずって、私のいる部屋へやって来たことさえある。それを見て、私はどんなに嬉しかったであろう。だが、あとで考えると、秀ちゃんが私をこんなに慕う様になったことが、とんだ禍の元となったのである。
片輪者の中では、蛙みたいに四足で飛んで歩く、十歳ばかりの可愛らしい子供が、一番私になついていた。シゲという名前だったが、快活な奴で、一人ではしゃいで、廊下などを飛び廻っていた。頭には別状ないらしく、片言まじりで仲々ませたことを喋った。
余談はさて置き、夕方の五時になると、私と諸戸とは、塀外の、いつも私が身を隠した岩蔭へ出かけて、土蔵の屋根を見上げながら、時間の来るのを待った。