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ことうのおに

孤島の鬼

江戸川 乱歩

「朝日」博文館、1929(昭和4)年1月号~1930(昭和5)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 181,795 字 · 359 页

青空文庫

そこから一間ばかり隔った所に、新聞紙を敷いて、洋傘をさして、きちんと着物をつけた二人の細君らしい婦人が、海に這入っている子供を見守りながら休んでいたが、時々深山木達の方を見て、アハアハと笑っていた。その二人の細君連が深山木の埋まっている場所からは一番近かった。反対の側のもっと隔った所には、派手な海水着の、美しい娘さんがあぐらをかいて、てんでに長々と寝そべった青年達と笑い興じていた。その外には、近くでは、一ヶ所に腰をすえている人は見当らなんだ。

深山木の側を通り過ぎる者は、絶え間もなくあったけれど、たまに一寸立止って笑って行く人がある位で、誰も彼の身近かに接近したものはなかった。それを見ていると、こんな所で人が殺せるものだろうかと、やっぱり深山木の恐怖が馬鹿馬鹿しく思われて来るのだった。

「蓑浦君、時間は?」

私が近づくと、深山木は、まだそれを気にしているらしく、尋ねるのだ。

「十一時五十二分。あと八分ですよ。ハハハ……」

「こうしていれば安全だね。君、君を初め近所に沢山人が見ていてくれるし、手元にこう、四人の少年軍が護衛してらあ。その上砂のとりでだ。