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とうおういぶん
東奥異聞
佐々木 喜善
「東奥異聞」閑話叢書、坂本書店、1926(大正15)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 63,862 字 · 124 页
しかし生命にはけっして別状あるわけではなし、かえっていまでは閉伊川一流の女王となっていることであろう。そしてこれからは年に一度ずつはきっと家人に会いに参るであろうとの話であった。
この板沢家には氏神に大天馬という祠がある。その祭りは秋九月ごろらしいが、その前夜にはかならずその娘が家に戻ってくる。玄関には盥に水を汲み入れその傍らに草履を置くとつねにその草履は濡れ水は濁りてあったということである。後世、明日は大天馬祭りだから今夜は板沢の老婆がくるというような言伝えになったのであるが近年はどうだかわからぬ。
この腹帯の淵についての伝説はまだまだ後にもある。この淵の付近に農家が一軒ある。あるときこの家の家族同時に三人まで急病に罹った。なかなか直らない。ところがある日どこからとなく一人の老婆がきていうには、この家には病人があるが、それは二、三日前に庭前で赤い小ヘビを殺したゆえだという。家人はそれを聞いていかにも思い当たりおり返していろいろと聞くと、その小ヘビはじつはこの前の淵の主の使者で、この家の三番娘を嫁にほしいので遣わしたのであった。どうしても三番めの娘は水で死ぬとのことであった。