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とうおういぶん

東奥異聞

佐々木 喜善

「東奥異聞」閑話叢書、坂本書店、1926(大正15)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 63,862 字 · 124 页

青空文庫

で、しかたなくウマを米俵をつけたまま抱きかかえて谷川を跨いで道をよけました。そのありさまを、お駕籠の内から見られた殿さまがずいぶん驚いて、あの者はなんじゃという。家来がその名を問うと、己はボウザワの徳という者だとのこと、あとでお城にお呼び出されて徳は力士に出世したということであります。そのウマにつけた俵は一俵二斗五升入れ、四俵で白米一石、それにウマ一匹の重さを加え足したものを掻い抱いたというわけです。この者の脚のこぶらにはあばら骨が三枚あったと言い伝えられております。

赤子抱きの伝説のすじはざっとこんなふうな話でございます。われわれの祖先にはよく神さまが赤子の姿となって現われております。奥山深谷で美女から、じつは山神さんから赤子を抱かせられて、かかる力量やまたは他の幸運、すなわち山幸やふいの宝物などを授けられたという話はだんだんにあります。

他の器物、すなわち珠とか杖とかあるいは鉄の椀だとか、こういう物を授かって、神力をえたという話のほうにはたいてい女人ではなしに、ふつう何々の神仏がというふうになっております。この赤子抱きの話の、赤子と言いますからには、つねにそれに伴うているものには美しい女人となっているのが当然で、後には稀代の力士ともなるべき若者なら、草深い片山里ながらかならず男のなかの男であったに相違