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とうおういぶん

東奥異聞

佐々木 喜善

「東奥異聞」閑話叢書、坂本書店、1926(大正15)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 63,862 字 · 124 页

青空文庫

父や母が齢をとって、この祖母のようになったら、おれも父や母をこうして奥山に捨てなければなるまい。それを思うとおれは悲しくて悲しくてならぬ。こんな無慈悲なことがおれにはできぬ、できぬ、と草の上をころび回って泣き口説きました。すると父はそれを聴いて、いかにもこの童のいうことがほんとうである。これはおれが悪い。けっしてこの老母をこんな所に捨てるのではなかったと、非常に心に悲しみかつ悔いて、また老母をおぶい直して家に連れ帰りました。

家にいた女房は、奥山に老母を捨ててしまって、ああああこれでようやく胸がすいた。これから親子水入らずの暮らしをするにいいと思って、祝い事の御馳走をこしらえて親子を待っていると、そこに夫がいやないやな姑をおぶって帰ってきました。それを見て女房はひどく怒ります。けれども夫は山で子どもにいたく泣き口説かれたことを言い聴かすと、さすがに女房も理に詰まり、この老母をあしけなくしたならば、やがてはわれわれもそうされるにきまっている。いままでのわれわれの心が誤っていたと夫婦ともに前非を悔いて、それからというものはともどもそろって老母に孝養をつくしました。