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とうおういぶん
東奥異聞
佐々木 喜善
「東奥異聞」閑話叢書、坂本書店、1926(大正15)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 63,862 字 · 124 页
そのために後には村内での評判の親孝行者だという名まえをとってすごしたという、こうした話であります(大正十二年二月中、村の老媼から聴いた話)。
これはずいぶんめでたい話であります。シナからでも渡来したものだろうが、ついでだから申しますが、奥州の辺土にはひどく複雑なくさぐさの話が伝わっております。前話を私に聴かしてくれた老媼の数多い物語のうちには、どうも上方文明の洗練と影響とをうけたあとのあまりにない話と思われるようなものもあり、また私らが少年のじぶん学校の教科書で読んで記憶していた潮吹き臼の話などもリーダーのそのままの形式でそっくりと話されている。こころみに問うてみたら子どものとき祖母から聴いたものだと言いました。老媼の子どものときというのだから六十余年も昔のことであり、そのじぶんの日本にはいまの中学ももちろん絵本童話専門の何月号と銘打ったものが、その前月上旬に家庭に配達されるというような機敏なかつ悪趣味な雑誌があったはずもありません。奥州のそのころには寺子屋の源平藤橘の手習い手本を除いたら、一村に一冊ぐらいのごくごく珍重された三世相大雑書があった程度でありましたでしょう。