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とうおういぶん

東奥異聞

佐々木 喜善

「東奥異聞」閑話叢書、坂本書店、1926(大正15)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 63,862 字 · 124 页

青空文庫

の夜にその年の吉凶をキツネどもが動作してみせる。豊年のときには稲刈充穂をつけたウマが倒れたり、また凶作流行病のある年には餓死や病人の、のたれ死にの態などを雪の上にて数多のキツネどもがやって見せるので有名である)。仙台にはいれば小牛田の広里にもあり、栃木の那須野ヶ原にもあったというのはこの偽汽車の話である。この話はみなさんは名を聞いただけですぐにあの話かとうなずかれるだろうが、自分は念のために諸国どこでも同じだろうと思われるその梗概を一つお話しする。例は自分の所から二十里ほどの後藤野の話。なんでもこの野に汽車がかかってからほど近いじぶんのことであろう。いつも夜行のときで汽車が野原を走っていると、ときでもない列車が向こうからも火を吐き笛を吹いてばっばっやってくる。機関士は狼狽して汽車を止めると向こうも止まる。走ればやっぱり走り出すといったような案配式で、野中に思わぬ時間をとりそのためにとんでもない故障や過ちが出来してしまつにおえなかった。そんなことがしばしばあるとどうも奇怪な節が多いので、ある夜機関士が思いきっていつものように向こうから非常に勢いこんで驀然と走ってきた汽車に、こちらから乗りこんでゆくと、ちょうど真にあっけなく手ごたえがなさすぎる。