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とうおういぶん
東奥異聞
佐々木 喜善
「東奥異聞」閑話叢書、坂本書店、1926(大正15)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 63,862 字 · 124 页
それで相手の汽車はたあいなく消滅したので翌朝調べてみると、そこには大きな古ギツネが数頭無惨に轢死しておったというのである。どこもこのすじでいっているようだ。たぶん大差がなかろうと思われる。その好例だと思うのに、大正十年十月二十一日の万朝報につぎのような記事が載ってあった。おもしろい記事であるから、その全文を採録する。いわく、中央線松本と篠の井との間の潮沢の大地辷りの区域は昔から鉄道当局が少なからず悩まされたところで、いまも霖の後には幾分ずつ地辷りをくり返し、俗に地獄鉄道と呼ばれている。いったい信州の鉄道には大小の地辷り場所がほかにも所々にあるが、潮沢は一方が深い谷一方は粘土の山で、その中腹を這わせてある。線路が一夜の間に谷底に消えたことも、また列車が地辷りに乗ってころがり落ちた例もある。それは別としてこの山中でいまでもよく人々が語るロマンスを紹介する。隣家へ何町、臼の借貸しも山坂が急であぶないというこの山間にお半婆さんというのがいた。ある朝新たに誰かが作った道をたどっていると、遙か向こうから真っ黒な怪物が大きな眼鏡をかけ、太い煙管でもくもくとタバコをふかしながら近づいてきた。